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あの日から、ぷっつり会話はなくなった。お嬢様の彼女とおちゃらけた俺では相性が悪いのだろうと、大抵の奴は解釈してくれているらしい。

ありがたいこって。



プライオリティー  




「ったく、これからフットサルだっていうのに、なんでスカートなんだ小島と桜井は」「まあまあええやん、目の保養やん」
カッカするキャプテンに水を掛ける。好きな相手には少しでもよく見られたい、そんな女心がわからないのだろうか、この男は。女所帯なのに。
俺は彼の視線の先を確認し、ははん、と呟いた。
「なるほど、小島ちゃん兄貴にべったりやもんな。そら何かにあたりたくもなるわ」「ばっ、何言ってるんだ」「顔赤いで」
ばっと顔を背ける仕草に、図星、と笑った。
女の子でスカートをはいていないのは、ただ一人だ。
ロングコートから覗く、ベージュのパンツとスニーカー。フットサル、やる気満々だ。

――えらいやる気でんなあ、女の子なんやから、もうちょっとお洒落しいや。

軽口はいくらでも思いつくし、彼女の強気な反応も予想できる。以前の俺ならば、からかうぐらいはしただろう。
今は違う。

彼女を視界にいれないように、彼女のことを考えないように、彼女に抱いている感情を、誰にも気付かせないように。
自分にさえも。

彼女らしいっちゃあ、らしいのかもな。

口には出さずに、ただ思う。お洒落よりも、新年の遊びにすぎないフットサルを優先する。きっと、髪をまとめるためのゴムも持ってきていることだろう。

「……あほらし」
考えない考えない。旨い具合に、彼女も俺を無視しているのだから、簡単に出来るはず。
「何か言ったか」「いーや、なんも」
笑って嘘をつき、俺はポケットに手を突っ込んだ。

今はするべきことがある。何をおいても、やりたいことがある。歴然たるプライオリティー。他のことに気をとられている暇は、ないのだから。






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