#3 関係性
「で、なんでその振袖のお嬢さんがこんなトコに居るんかな藤村コラ」
「それがさ先輩、振袖やで? しかも赤。敵チームカラーでもないし、ウチのでもない赤。居るんおかしいやん。あのままやったらサポーターかガードマンに放り出されるんオチやん」
先輩に聞かれたシゲのかわりに、なぜかノリックが答えた。
『知り合いなん?』
答えの返らない質問にシゲの何を察したのやら、ノリックこと吉田光徳は全部手を回したらしい。気付いたら、赤い振袖のお嬢さんをバックステージである控え室までご招待、となっていた。
まあ着替えやらミーティングやらを済ませるまで、挨拶も交わさないまま外で待機してもらっているのだが。
「だからって……だからってなあ、藤村ばっかオンナに囲まれとって、全く普段からけしからんことやと俺はもー」
脈絡ない台詞を吐きながら首をぶんぶん振る先輩。ちなみにMF。
「まあまあ」
「お前に慰められたくない!」
あはは、と笑ってから、シゲは金の頭をがしがしかいた。
参った。正直。
上条麻衣子。中学の時の、サッカー部のチームメイト。
別に甘い関係ではない。
全くそのとおりなのだが、言い忘れた、もとい、できれば忘れてしまいかった項目がもう一つある。
上条麻衣子。
シゲと同じで学校の成績は最悪、なのになぜか聡かった。
彼女は中学時代、シゲの唯一の天敵だった。
隠し事の多い中学生だったと、今更ながらに思う。ダブりの原因を筆頭に、隠さなければならない事が、いや、隠したい事が、多かった。
母親に捨てられ、家を継がせる道具として父親に引きとられかけた、なんて知れたらどんな反応が返ってくるか分りきっている。
同情も哀れみも必要なかったし、されれば逆に苛ついた。だから隠した。
そうするのが一番手っ取り早かったし、簡単だった。所詮中学生のやることだ、こいつには何かある、そう薄々勘付く奴も居ただろうが腹の中まで踏み込ませたことはなかった。多分今でも親友と呼べるだろう、垂れ目茶髪の男にさえ、本音は見せなかったのだ。シゲにとってはそうするのが普通で、踏み込ませないようになんて簡単にできていた。
彼女以外の人間ならば。
試合後の雑多事が終わり、解散となる。意味深な視線を向けてくるノリックと先輩に曖昧な笑みを返しておいて、シゲはバッグを肩にかけ、一足先にドアを開ける。
ドアの向こうには、彼女が居るはずだった。
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