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エピローグ後プロローグ〜卒業についてのあれこれ2〜


「卒業おめでとさんお二人さん。ホンマに仲ええなぁ、高校離れても全然心配ないな」
佐藤成樹はそう言うと、卒業証書の入った筒で水野の頭をぽんぽん叩く。
「余計なお世話だ」と、水野はその赤いリボンの巻かれた筒を手で払った。
 シゲの筒を持つ右手の反対側、左手に持った紙袋の中はラッピングされた包みが詰まっている。普段パーカーで済ませているこの男が、珍しくきちんと着てきた学ランには、式まではきちんとついていたはずのボタンがひとつも残っていなかった。それこそ、袖ボタンに至るまで。
それを一瞥するなり、有希はあきれ顔になった。
「ここまで来ると壮観ね。あんたこんな所で油売ってていいわけ?」
シゲはちょいと野暮用、と答えて教室の中を見回す。
「お嬢に会いにきてん。多分、会うの今日で最後やしな」
「謝りにでも行く気か?」
水野は眉をひそめた。
シゲと上条麻衣子の皮肉たっぷりの舌戦はこのクラスの名物のようなもので、シゲは他クラスからわざわざやってきては上条麻衣子を怒らせたり苛立たせたりするのを楽しんでいるように見えた。
言い争いがじゃれ合いに見えるのか、二人が付き合っているとか両思いなのだとかの噂も立っている。
けれど、間近にずっとシゲの様子を見ていれば、それは好きな子をからかって楽しむレベルを越えていて、どうにも引っかかるのだ。
「人聞きの悪い。謝るようなこと、した覚えないで、俺」
飄々と答えたシゲは、目ざとく上条麻衣子を発見し、お、いたいた、と呟く。

「シゲ」
鋭い声で小島が呼び止めた。振り返るシゲ。
だがそのセリフの続きはなかった。
「何や?」
「別に、なんでもない――さっさと行けば」
「小島ちゃんにしちゃ、珍しいな。まあええか、タツボン、また後で」
「ああ」
机の間をすり抜けるようにして、シゲは教室の後方へ向かう。
盛大なため息が近くで聞こえて、水野は視線を戻した。
頬杖をついた両手に挟み込まれるように、有希の暗い顔が見える。
「どうしたんだよ」
「……本当は内緒なんだけど、どうしよう、もう卒業だし、話しちゃおうかしら」
なんだか深刻そうだと、水野は軽く身を乗り出す。
「麻衣子は、麻衣子はね、水野。シゲのこと好きなのよ。もう、ずっと前から」
「……上条が? 嘘だろ?」
思わず上条の席を見遣ると、クラスメイトの間を縫って近付いてくるシゲに気付いて、不機嫌な顔の上条麻衣子が見えた。



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