麻衣子編 #3 /// site top / text index / ニセモノの恋 index


#3 殻の中の想い


『小さい頃はいじめられっ子だった』 といったら、信じてもらえるだろうか。

今の、上条麻衣子を知っている人間に。

高飛車で、傲慢で、皮肉屋なのは決して生まれつきではない。

性格は、成長の過程で形作られるものだ。ではいつからこうなのだろう。なぜこうなのだろう。

麻衣子本人だけは、その理由を知っている。

生来の気質、というものがあるならば、今とは全く逆だったと、麻衣子は思う。
 つまりは、内気で怖がりな、大人しい子供。付け加えてお嬢様だったから、他の子供よりも世間知らずで純情で、やたらめったら、からかわれ泣かされる子供だった。
 今ならば、それは好意や妬みから来るもので、自分を恥じる必要などないと知っている。けれど当時はつらくて仕方がなかった。

泣くから面白がられるのだと気付いて、泣かなくなった。反応するからからかわれるのだと知って、無視することを覚えた。無視して相手にしないようにしても、聞こえよがしに馬鹿にされるから、高飛車な態度で馬鹿に仕返すのが習い性になった。

こうして殻はつくられた。

そう、性格なんて、全くもって殻なのだと麻衣子は思う。
 
 殻は守るために作られる。そして、厚くすれば厚くするだけ、閉じ込められて中から出られなくなるのだ。

周りから本質が見えなくなる代わりに。

周りから自分を守る代わりに。

小学校の半ばには既に、麻衣子は殻の中から出られなくなっていた。



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