最近、やけに喉が渇く。 京都の夏はやたら暑いし、シゲはスポーツをしていて代謝も良いのだから、当然といえば当然。 でも、それだけじゃ説明が付かない位に、最近は、喉が渇く。 焼け付くほど。 耐え難い渇望。
オアシスの蜃気楼
「明日か」 夕刻、高校サッカー部の練習後、街角で見かけた電光掲示板の日付を見てシゲは呟いた。 明日、彼女が京都にやってくる。 夏休みを利用して、小旅行というには短すぎる、日帰りのデートをするために、わざわざやって来るのだ。 彼女に会うのは久しぶりだ。一ヶ月近く会っていなかった。 京都と東京にいる二人にとっては普通の間隔、とも言えるけれど、要するに気分の問題。久しぶりに、直に彼女に触れられる。
喉が渇きを訴える。 近場のコンビニで、今日何本目かのスポーツドリンクを買って、一気に飲み干した。こめかみから垂れてきた汗をTシャツの袖で拭った。 彼女に会えれば自分はとても嬉しいだろう、会えば、嬉しくて楽しくて、切ないけど幸せ、そう自分は思うだろう、というような明るい予感が、これ程無いのは初めてだった。 遠距離恋愛を始めて一年と、半年。 気温に合わせ、会うたびに薄くなってゆく彼女の衣服は、シゲに季節のうつろいだけ、感じさせるわけではなかった。
じりじり焦げるように、喉が渇く。耐えられない。 シゲは荷物を家に置くと、ロードワークに出た。途中、喉の渇きを水分で何度も癒した。 『いよいよ明日ね、楽しみ。遅刻しないでよ』 そんな彼女のメールに、なかなか返事ができなかった。
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