Winter Holidays
待ち合わせたお店で、麻衣子は注文したドーナツをただ眺めていた。 向かいの席には、クリスマス休暇を利用して留学から一時帰国した有希が座っている。 運動してるとすぐお腹すいちゃって、と2コ目のマフィンにかぶりつく有希は、日に焼けた顔に、生き生きとした表情。 翳りのない笑顔が眩しくて、麻衣子は肩をすくめた。 「あいかわらずね。ずっとサッカー漬け?」 「もちろん。そのために行ったんだもの! 寝る間も惜しんでサッカーしてるわよー。勉強もしてるけどね」 「そう。満喫してるのね、羨ましいわ」 「なに言ってるのよ麻衣子。退屈なの? 日本で女子高生って言ったら、一番ちやほやされて楽しい時期のはずだけど?」 麻衣子はミルクティーをぐるぐるスプーンで掻き混ぜた。 「ちやほやされる相手によるでしょ、そんなの」 「まあねー。麻衣子なら、変なのいっぱい寄ってきそうだものね。麻衣子、変わったし」 え、と麻衣子は手を止めた。 「私、変わった?」 「そうね。雰囲気が女らしいっていうか、柔らかいっていうか。上品? なのは昔からだったけど、うーん、なんていうか、大人っぽくなったっていうの?」 「大人、ねぇ」 と麻衣子はため息をついた。 「歳は確実に取ってますもの」 「そんなんじゃなくて。きれいになったわよ。びっくりしちゃった」 「……そうかしら。きれいになる努力はしてるつもりですけど……」 首を傾げる麻衣子に、有希はココアをずず、とすすってから、含み笑いをした。 「何よ、自信ないの? 麻衣子らしくもない」 「だって、」とため息をつく。 「なかなか、会えないんだもの。だめね、弱音ばっかりで」 「そっか。最近シゲに会ったのいつ?」 「……4ヶ月前」代表の試合が東京であったので。 「ふうん、次はいつの予定?」 「わからない。クリスマスもお正月も、学校の合宿とか代表の試合とか、いろいろあるらしくて、無理かもって」 有希が眉をひそめて言った。 「それって、冬休み中だめってこと?」 「……かもしれないわ」 なによそれ、と有希は体を引くと、勢いよく背中を椅子の背もたれに打ち付けて言った。 「トッププレイヤーって、恋人には向かないわね」 麻衣子は無言で同意した。
距離が離れているからといって、心までが離れているとは、麻衣子も思っていない。連絡を取る手段はいろいろあって、離れて2年近くになる今でも、心を繋ぎ止めようと、お互いに踏ん張っている。
けれど、遠くにいる相手に、なにができるだろう? 電話やメールや、贈り物をする以外に?
好きだから、こんなにも会いたいと思うのに。
「お年玉に期待してみますわ」 そう言って、麻衣子は力なく微笑んだ。 麻衣子が京都へ行きさえすれば、顔ぐらいは見られるだろう。練習している所を見るのでもいい。 そう言うと、 「あんまり甘やかすとつけあがるわよ、あいつ」 と有希が笑った。
帰ると、シゲから何か届いていた。 クリスマスプレゼントが先日届いたばかりだったので、不思議に思いながら包みを開ける。 中には新幹線のチケット。日付は、冬休み終了間際。 『なかなか会いに行けんでごめん。お嬢、会いに来てくれん?』 そんなメッセージに、麻衣子は、嬉しいため息をついた。
さっさと大量の宿題を終わらせてしまって。 とびきりのお洒落をして。 会いに行きましょ。 あなたのために、努力いたしましょう。
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