サーカス団団長の娘と道化師/// site top / text index



サーカス団団長の娘と道化師

「あなた、化粧落としても何も変わりませんのね」

「何言うてますのんお嬢、落としたほうがええ男やろ」

「……そうかしらね。化粧してる時のほうが、まだマシって気もするのですけれど?」

「ホンマ、おもっしろいこと言うねんな」

笑って、あいつが言った。ニセモノの笑顔なんて、つくりものの笑顔なんて、舞台を降りれば痛々しいだけなのに。

「……化粧、落としたらもうピエロじゃないのよ? やめたらちゃんと。」

   その、笑いかた。

「舞台は舞台、プライベートはぷらいべえと。ちゃあんと切り替えてるやん、何年ピエロやってる思てんねん。幼馴染なんやから、知ってるやろお嬢」

じゃあ、今も舞台の上だっていうの。

私と話してる今も。幼馴染と、二人っきりの時ですら。

「いやあー、腹減ったわ。俺メシ行くわ。お先ーお嬢」

「ちょっと!」

くるりと背を向ける。あいつは、行ってしまう。あっという間に、いなくなってしまう。

「……待ちなさいよ」

届かないけれど、言わずにはいられない。

私じゃあ、あなたを舞台からは降ろせないんですか。

本当の笑顔を、引き出せはしないのですか、と   


end



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