悪魔と詐欺師
「はい、じゃあココとココにサインお願いね、ここにはハンコ。三文判でいいから」 「ほいほいっと。なんや面倒いんやな、悪魔の契約ゆうても」 「つべこべ言わず、さっさとおやりなさい! あなた、願い事叶えて欲しいのでしょう?」 「そりゃあ、ねえ。」 にやりと笑って詐欺師は答えた。契約書の記入欄は次々と埋まり、あとはハンコを押せば出来上がりだ。 「ほれ出来たで」 ひったくるように取る悪魔。記入もれがないか、印鑑が違う苗字ではないか(佐藤か藤村か、どっちなんだい悪魔よ)、しっかり確かめた悪魔。 「ばっちり! これで契約完了よ。あなたの願いを一つ叶える代わりに、あなたの魂、私がいただくわ!」 ほほほほ、と高笑いする悪魔。 それを見て詐欺師は、してやったりとほくそえんだ。 「なあお嬢、俺まだ、願い事言ってへんのやけどな」 「なによ、私を誰だと思っているの? 悪魔よ? たいていの願いは叶えられるわよ?」 自信満々、胸に手をあてふんぞり返る悪魔に、ウインクしてみせながら詐欺師は言った。 「じゃあ叶えて欲しいんやけどなお嬢。人間になってくれへん? 惚れたで。いっしょに天寿を全うしようやないか」 人間になってしまったら、悪魔の力は使えない(だってにんげんだもの)。悪魔にも戻れない(だってにんげん以下略)。魂も取れない(だって以下略)。 だが、悪魔がひっかかったポイントは、そこではなかった。 「ちょ、、ななななな何言いくさるんですのあなたは! っほっほっほ」 「ふくろう?」「違うわよ! だから、ほ、ほ」「ほーたる来い?」 「違うわっ! だから、ほ、ほれたって……いって…た…」 顔を真っ赤にし、尻すぼみになりながらもようやく最後まで言い切った悪魔。
詐欺師は、なんだか心底嬉しそうに笑って言った。 「お嬢が人間になったら何ぼでも言うたるさかい、はよ、願い事叶えてーな」
end
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