天使と悪魔/// site top / text index



天使と悪魔

黙々と書類を処理する。部下である天使の報告を聞く。指示を出す。仕事ならば、呼吸のように容易くできるのに。

「仕事、ちゃんとやりなさい」

私は部下の一人を締め上げていた。「給料減らすわよ」

そいつは勘弁、と返して来はするが、心ここにあらずだ。当然だろう、パートナーに目の前で堕天されてしまったのだから。

 堕天ならば、私も見たことがある。

今でも覚えている。優しい男だった。ぶっきらぼうで、クールで……堕天するほどの想いを抱えているとは、微塵も思っていなかった。

 あの頃、彼がまだ天使だった頃。私は彼を愛していた。彼が好きだった。世界で一番。

なのに、私は堕天しなかった。

彼が堕天したときーー私も堕ちてしまいたいと、そう望んだはずなのに。
私は彼を愛していたはずだ。愛せていたはずだ。なのに、今でも私はこうして天使でいる。

ならば、あれは愛ではなかったのか。愛ではないというならば、愛するとは一体、どういうことなのだろう。

わからなくなった。

「……しっかりしなさいよ」部下の天使の頭を軽く叩いて、仕事に追いやる。

天使なのに。私は、愛することができない。




end



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