パラレルでシンデレラ2 ミズユキの場合/// site top / text index



2〜ミズユキの場合〜

 シンデレラは舞踏会に来ていました。もちろん、お目当ては王子  ではなく、良家のぼっちゃんと知り合うためです。シンデレラは王子には微塵も興味ありませんでした。

 なにしろ、カザマツーリ家命のシンデレラ。シンデレラは、男に生まれてこなかったことが、残念でなりませんでした。

 シンデレラの家、カザマツーリ家に男子の跡取りはいません。よって、婿をもらうことになるのですが、父であるカザマツーリ男爵は暢気なお人で、二人いる娘のどちらにもまだ相手を探していないのです。むしろ、探して来る気があるのか? いや、ない、と結論したシンデレラは、カザマツーリ家存続のため、なんと自力で婿探しにやってきたのでした。
「なのに、当てが外れたわ……」 そう、この舞踏会は、王子の花嫁を捜すためのものだったのです。いるのは衛兵や侍従ぐらいのものです。
「これなら義姉さんが来ても大丈夫だったわね」
 義姉を、策略を持ってまで家に引き留めたのには、訳があります。カザマツーリ家存続のため、婿をもらうことになるのがシンデレラか義姉か、まだわからないのです。そして義姉は、大変素直というか、ろくでもない男に引っかかりそうな、わかりやすい性格をしているのです。義姉に近づく男には目を光らせる必要があります。舞踏会などには当然行かせられません。
 実はこの時、安全なはずの家で義姉はピンチに陥っていたのですが、シンデレラは当然そんなこと知りません。

 広間は万全に着飾った若い娘たちであふれかえっています。この中のだれもが王子目当てなのかと、シンデレラはぞっとしました。

 

  広間は万全に着飾った若い娘たちであふれかえっています。この中のだれもが自分目当てなのかと、王子はぞっとしました。

 ほっといてくれないか。それが、花嫁探しの舞踏会における、偽らざる王子の心境でした。
とにかく、恋も愛もどうでもいいのです。王子は今、国政でいっぱいいっぱいなのです。若い女性相手に甘い言葉を囁いたり、駆け引きにつきあったりしている暇も余力も、ついでに才能もないのです。
 なのに集まってくる、『王子』に過大な夢を抱いている若い娘の集団。
「……三日で失望されるのがオチだ」
けれど、いつかは結婚しなければならないことも事実です。王子は知恵を絞り始めました。

「はーい注目! 次の舞踏会の招待状を、こちらで配布してまーす」
広間の端から聞こえてきたのは、そんな文句でした。王子狙いの娘たちは、招待状をもらおうと殺到します。
王子に興味のないシンデレラは、別に次は来なくていいやとばかりに、ひとり料理をつまんでいました。この行動がシンデレラの運命を決定づけるとは思いもせずに。
 シンデレラを見つけた王子の侍従は、王子にその旨耳打ちしました。
「そうか、居たか」 王子は変装のための仮面をつけ、シンデレラに近づきます。
「なぜ、招待状を受け取らないのですか?」 王子が尋ねると、
「王子様以外の殿方がいらっしゃらない舞踏会に来ても、意味はありませんもの」 正直にシンデレラは言いました。
「ほう、王子には興味がないとおっしゃる?」 「ええ。カザマツーリ家を継げない方には興味ありません」
小気味好い返答に、王子は笑いを噛み殺しながら、シンデレラの顔をまじまじと見つめました。
 このときはじめて、シンデレラはこの仮面の男を怪しみました。
(誰だコイツ……衛兵でも、侍従でもないみたいだし。仮面舞踏会でもないのに、仮面つけてるし)
「そろそろお暇いたしますわ」 シンデレラは丁寧に一礼し、王子に背を向け広間を出ます。
「娘の後をつけろ」 王子は侍従に命じました。
 その晩のうちに、王子の手元にシンデレラの住所と、なぜか靴が片方届きました。
帰りがけ、シンデレラは長い長い階段を下りたのですが、急いでいたので何度も靴が脱げ、階段を上り直すのが終いには面倒になって、そのままだったのです。
「おっちょこちょいなのか、ただ単に短気なのか……まあ、いい口実ができたな」
王子はその靴を箱に収めると、シンデレラを訪ねる算段を始めました。





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