夏の海3/// site top / text index / 16~ |
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夏の海3海の食事といえば、海の家。 めいめい昼食を終え、海へと駆け出す面々を、シゲは日に焼けた畳に寝っ転がって見送った。怠け者の気性や、昔からの習性がそうさせるのかもしれない、やかましく騒ぐ連中から少し離れたかった。 今日のメンバーは、気心知れた仲間だ。みんな裏表なしに遠慮なくしゃべり、からかうにも手加減はいらない。 そして、今。 シゲから少し離れた所に、上條麻衣子が座っている。 彼女に会うのは久しぶりだ。5月に、サッカー部の集まりで顔を合わせたきりだった。 シゲは転がったまま彼女を見た。こんなにゆっくりと彼女を眺めるのもそれ以来。 ほっそりとした体のライン。眩しいぐらい白い肌。黒く滑らかな髪。 無言でその横顔を見つめているのがわかったのか、彼女が口を開いた。 しばらくそのまま視線で探り合う。多分、ばれていたのだろう。シゲはそう結論し、力が抜けて去りそうな気配を見せる彼女の手を、指先でつまんだ。 柔らかい手だ。 瞬間、過去に触れた、彼女の柔らかな胸の感触がリアルに蘇る。 学校、暗がり、彼女は制服で。 「……痛いわ、佐藤」 しばらくそのままにしてから、つまんだ指先を離した。何事もなかったかのように遠ざかる白い手。 彼女はまた、海を見つめる。 吹きさらしの海の家に、波音が充満する。 遠くから、シゲと彼女を呼ぶ声がする。 一年前の出来事が次々と瞼をちらついた。 |
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