8. 月籠り
「麻衣子、ごめん、ちょっといい?」 グラウンドで有希に呼び止められた麻衣子は、「あれ、持ってる? なんか始まっちゃいそうでさ」という有希の言葉に頷いた。 「鞄にあるわ。部室に行きましょう」 連れだって、間借りしている新体操部の部室へ戻った。丁度誰も居なかった。 女同士であっても、こういう事柄は微妙に気恥ずかしい。 「なんで女って、こんな面倒なのかしら。毎月毎月。お腹は痛いし」 麻衣子が白い包みを手渡すと、有希はそんなことを言って顔をしかめた。 「来るとほんっとげんなりするのよね。そうじゃない?」 「私は、安心するけど」 「どうして?」 麻衣子は、しまった、という顔をした。 しまった、という顔の麻衣子をみて、有希もまた、しまった、という顔をした。 「……ほら、いろいろあるじゃない。ちゃんと女なんだってわかるとか」 「……まあ、不順だと病気だったりするらしいしね」 会話がちぐはぐに途切れた。 「麻衣子……」 「何?」 「ううん、なんでもない。あたしトイレ行ってくるね」 そう言い残して有希は麻衣子を拒むように部室を出た。
「……気付いてたんだ」 麻衣子は小さく呟いた。 有希はずっと気付かないふりをしていた。 一人残された部室の中で、ぽっつりため息をつき、麻衣子は瞼を閉じた。
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