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5.距離0 No way / No distance



下腹部からせり上がってくる疼きと熱。
彼の吐息が掛かっているのだろう、右肩だけ熱く感じる。
距離が0では、彼は見えない。
目の端っこで、揺れる金の髪が捉えられるぐらいで。
視界にあるのは、コンクリートの壁、棚は木製で、古い。
それと真っ正面にある出入り口。唯一外界へ続く扉。鍵がかけられている。
部室全体に埃が舞っている。
扉の隙間から漏れる光が、埃を照らして、道になって見える。
ああ、アレに似ている。なんだっけ?

――雲の隙間から、漏れる、こんな光、なんて、言うんでしたっけ?

――そんなんええから……ちょお、黙って。

あやすように揺らされながら、踊り続ける埃を見ていた。

光に照らされて踊る埃が、光の道筋を映し出している。

思い出した。ヤコブの梯子。天使の梯子だ。

なんだか、ひどく場違いだ。

少しだけ笑った。

――ねえ、もう戻れない?



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