3.リミット/// site top / text index / 16~



どうしてこんな事になったのだろう。なぜこんな事を繰り返すのか。彼は。私は?



3.リミット



白い開襟の半袖が、ひっぱられて引きつっている。
シゲの胴元と襟元を同時に彼女が押しているからだ。
シゲを突き放す方向への抵抗はシゲが押さえつけているから、力は自然横に流れて、白いシャツをあべこべの方向へと引っ張るかたちになる。

シゲの指先に絡みつく彼女の体液の熱さと、指の動きに吸い付いてくる柔らかな感触と、懸命に押さえているようなのに響く声と。
『もう』、とか、『だめ』、とか、終わりを促す言葉は黙殺した。
口づけは恋人同士の愛情表現ではなく、単なる声ふさぎで。
一線を越えさえしなければいいのだと、誰に向けるでもない言い訳をした。

目を閉じ、灰色のコンクリートに背中を預けて脱力している彼女のまだ荒い息づかいと、上気した頬の色。
額には汗が散っていて、隙間から入る陽光に照らされ、光る。
シゲがその場にひざまづいて、閉じられた膝にキスをすると、彼女はびくりと体を縮め、シゲを見た。
彼女の目に宿っているのは――

何も言わずに倉庫を出てゆく彼の背中を、麻衣子は黙って見つめていた。
しばらくそのまま動けなかった。
彼の目に灯った熱に、その熱の意味に気付いてしまった。
逆光で、金髪だけ明るくて眩しくて、表情はほとんどわからない筈なのに、なぜわかってしまったんだろう?

チャイムが昼休みのおわりを告げる。
教室に戻っても、4時限目の自分には戻れないと悟った。



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